Watanabe Lab

Introduction - 高次脳機能と脳病態の解明 -

脳の複雑な情報処理を理解するためには、大脳皮質だけではなく大脳皮質と連絡する皮質下の領域にも注目する必要があります。私たちの研究室では、大脳皮質とともに、その広範な領域と密接に連携する基底核、さらに大脳皮質や基底核の神経活動を修飾するドーパミンなどニューロモデュレーターの神経回路に注目して研究を進めています。このような研究から、運動制御、記憶・学習、意思決定、社会性など様々な脳機能について理解がすすむとともに、アルツハイマー病、パーキンソン病、発達障害や統合失調症など精神神経疾患の病態の解明や革新的な治療法の開発が期待できます。

brain circuits 1

 

Current projects

大脳-基底核神経回路による高次脳機能制御

基底核は相互に接続する複数の神経核から構成され、大脳皮質が直接投射する線条体および視床下核は基底核における大脳皮質入力に対するインターフェースとして機能します。大脳皮質から基底核へのそれぞれの経路のニューロンを正確に同定しその神経活動を計測し、さらにその活動を操作することで、各経路がどのような情報処理に関わっているか明らかにします。例えば、下図のように、ウイルスベクターにより視床下核へ遺伝子導入を行い、その神経活動を操作し詳細に解析することで、パーキンソン病の病態の解明や治療法の開発につながる大脳-基底核神経回路に関する新知見が期待できます。

brain circuits 2

脳機能解明のための新技術

大脳皮質や基底核の回路動作や可塑性はドーパミン、セロトニン、アセチルコリン、ノルアドレナリンなどのニューロモデュレーターによりダイナミックに変化し、その結果、認知機能や行動が大きく変化します。しかしながら、これらのニューロモデュレーターのニューロンに対する作用は電気生理学的手法で捉えることが困難な面もあり、詳細は不明です。私達は、光遺伝学的手法に加えてイメージング技術を新たに開発し、複雑なニューロモデュレーターの作用を明らかにします。

zebra finch song

音声の獲得と制御の神経回路メカニズムについて

ヒトと同様に音声を模倣により学習するソングバード(スズメ亜目の鳥類)の脳には、ヒトの言語領域のように特別に発達した音声制御系神経回路が存在します。私達は、これらの鳥類の音声がヒトの言語にもみられる音声パターンの規則性(一種の文法規則)を持つことに注目し、ニューロンの電気的な活動が文法規則をどのように表現しているか明らかにしてきました。ソングバードを使った研究に高度な電気生理学的手法や分子遺伝学的手法を適用することで、文化的に継承される言語のような能力の基盤となる脳機構が明らかになると期待できます。

mouse experiments